ライブで時々見かける、観客が密集して体をぶつけ合ったり、人の上を流れるように移動したりする光景。これらはそれぞれ「モッシュ」や「ダイブ」と呼ばれる、ライブの楽しみ方の一つです。これらはロックバンドのライブでよく見られますが、こちらの記事では、その楽しみ方や注意点、そして苦手な人向けの回避方法までを分かりやすく解説します。
モッシュ(モッシュピット)とは?4種類紹介

モッシュとは、ライブ中に観客が密集し、互いに体をぶつけ合ったりしながら興奮を表現する行為です。ライブ会場における音楽の「衝動」から、身体を動かしぶつけ合います。主に、ステージ前の広くなったスペース「モッシュピット」で行われます。一口にモッシュと言ってもいくつかの種類があるので、主なものを4つ紹介します。
通常のモッシュ
最も一般的なモッシュのスタイルです。激しい曲に合わせて、観客同士が肩をぶつけ合ったり、体を揺らしながら飛び跳ねたりします。特定の決まった動きがあるわけではなく、観客それぞれが自由に体を動かして楽しむのが特徴です。
ハーコーモッシュ
「ハーコー」とは「ハードコア」の略で、より激しい動きを伴うモッシュです。腕を振り回す、足を蹴り上げるなどのダイナミックな動きが多く、周囲の人との接触も強くなります。初心者には少しハードルが高いかもしれませんが、慣れてくると一体感が味わえます。ハードコアやメタルなど激しいサウンドのジャンルのライブで起こりやすいです。
サークルモッシュ
観客が大きな円形を作り、その中で走ったり、激しくぶつかり合ったりするモッシュです。曲のサビなどで一斉に走り出すのが醍醐味で、その迫力は圧巻です。周りの人とぶつかるだけでなく、転倒にも注意が必要です。
ウォール・オブ・デス(WOD)
ウォール・オブ・デス(WOD)とは、観客が2つのグループに分かれて対峙し、曲の合図とともに一気に走り出してぶつかり合う、最も激しいモッシュの一種です。特に海外のメタルバンドなどで見られますが、最近では日本でもSiMやCrossfaith、coldrainなどラウド系のバンドのライブで見られるようになってきました。
▼こちらはCrossfaithのライブ映像です。ボーカルの呼びかけに応じて大きなWODが形成されています。
ダイブとは?3種類紹介

ダイブとは、観客が他の観客の上に飛び乗り、そのまま人の上を流れるように移動する行為です。ライブの盛り上がりのピークで見られることが多く、危険性もありますが、音楽による自身の「衝動」を全身で解放することができます。
クラウドサーフ
最も一般的なダイブの形で、観客が他の観客の上に飛び乗り、観客の頭上を流れるように移動する行為です。クラウドサーフィンとも呼ばれ、まさに群衆の波の上をサーフィンしているかのような感覚を味わえます。多くの人の手で支えられながら移動します。
▼こちらの映像では、サビの時にどっと人が転がっている様子が映っています。
ステージダイブ
クラウドサーフが観客席からステージの方向に向かっていくのに対し、ステージダイブはステージから観客側に飛び込むダイブのことを指します。ステージダイブを略してステダイと呼ばれることもあります。
アーティスト自身が観客との一体感を高めるために観客席に飛び込むこともありますし、クラウドサーフでステージに到達した観客が、観客席に戻るためにステダイを行うこともあります。
リフト
観客が他の観客を肩車のように持ち上げる行為です。それまで激しかった曲が落ち着いたCメロに移行したときや、直後にテンポが速くなるイントロのときに起こることがあります。曲調が落ち着いている時にリフトを行い、テンポが速くなるとその状態からそのままダイブする光景もよく見られます。
最近は、肩車だけでなく、人の肩の上に二足で立つ「立ちリフト」をする人も増えていますが、こちらは大変危険であり、アーティスト側が苦言を呈する場合も多いので、アーティスト側の意向やライブのルール、周囲への配慮を意識しながら楽しみましょう。
モッシュの上手なやり方
モッシュは、怪我なく安全に楽しむことが最も重要です。以下の点を意識して、周りの人との一体感を味わいながら、自分も周りの人も安全に楽しみましょう。
身体の力を抜く
モッシュ中は全身の力を抜いて、流れに身を任せるようにしましょう。力を入れて突っ張ると、転倒した際に大きな怪我につながる可能性があります。また、周りの人との衝突時に衝撃を吸収しやすくなります。
人を吹き飛ばすつもりでぶつからない
モッシュは相手を吹き飛ばすことを目的とした行為ではありません。あくまでも、音楽に合わせて互いの体をぶつけ合い、一体感を楽しむためのものです。相手を傷つけるような乱暴な行為は絶対にやめましょう。
ダイブの上手なやり方
ダイブはモッシュ以上に周りの人の協力が必要な行為です。安全に楽しく行うために、以下の点を意識しましょう。
ダイブする前に合図する
ダイブする前に、周囲の人の肩をトントンと叩くなどして合図を送り、協力をお願いしましょう。いきなり飛び乗ると、周りの人が対応できず、自身の転倒など思わぬ怪我につながることがあり危険なので、必ず事前に合図を送るようにしましょう。
過度に足をバタつかせない
人の上を移動する際に、足を激しくバタつかせると、周りの人の顔や頭を蹴ってしまう可能性があります。移動中はできるだけ足を動かさず、支えてくれる人に身を任せて転がるようにしましょう。
モッシュやダイブを行う際のマナー、注意点

モッシュやダイブは、周りの人への配慮を忘れてしまうと、トラブルの原因になってしまいます。以下のマナーや注意点を守って、みんなで気持ち良くライブを楽しみましょう。
1. 禁止されているライブハウスやフェスでは絶対に行わない
ライブハウスやフェスによっては、モッシュやダイブを禁止している場合があります。会場のルールは事前に確認し、禁止されている場合は行わないようにしましょう。無理に行うと退場を命じられることもあります。
2. 嫌がっている人を無理に巻き込まない
モッシュやダイブが苦手な人もいます。無理やり巻き込んだり、邪魔だと言ったりするのは絶対にやめましょう。相手の意思を尊重し、お互いが楽しめるように配慮することが大切です。
3. 周囲への配慮を常に頭に入れておく
モッシュやダイブの最中も、周りの人への配慮を忘れないようにしましょう。特に、小さな子供や女性が近くにいる場合は、巻き込んでしまうと怪我につながりかねないので一層注意が必要です。モッシュやダイブを楽しんでる途中も、周りを見渡しておくようにしましょう。
4. 危険な装飾品や貴重品等は外しておく
鋭利な装飾品や、ポケットから落ちやすい貴重品などは、あらかじめ外しておくか、ロッカーに預けるようにしましょう。特にベルトの金具など鋭利なものは、周りの人を傷つけてしまう可能性があるので、外しておき安全な服装でライブを楽しみましょう。
5. 転倒者がいたらすぐに助ける
モッシュやダイブ中に転倒者を見かけたら、すぐに手を差し伸べて助け起こしましょう。放置すると、後続の人に踏まれて大きな怪我につながる可能性があります。
女性がモッシュ、ダイブする場合

女性がモッシュやダイブに参加する場合、特に注意すべき点がいくつかあります。安心してライブを楽しむために、以下の点に気をつけましょう。
転倒に注意
男性に比べて体重が軽い分、モッシュ中に転倒しやすい場合があります。もし転倒してしまった場合は、周りの人に助けを求め、すぐに立ち上がるようにしましょう。
痴漢に注意
モッシュやダイブは人と体が密着することが多く、残念なことに中には痴漢行為を企む人もいます。もし痴漢行為にあった場合、眼の前で遭遇した場合は、近くのスタッフやアーティストに知らせるようにしましょう。
「自分がライブを止めてしまうのが申し訳ない」とは思い泣き寝入りせず、きちんと被害を伝えましょう。
ライブ、フェスでモッシュやダイブを回避する方法
「モッシュやダイブは少し怖い」「自分のペースでライブを楽しみたい」という人もいるでしょう。そんな人でも安心してライブに参加できるよう、モッシュやダイブを回避する方法を紹介します。
モッシュ、ダイブ禁止ライブに行く
最初からモッシュやダイブが禁止されているライブやフェスを選ぶのが一番確実な方法です。多くのライブハウスやフェスでは、公式ウェブサイトでアナウンスされています。
事前に過去のライブ、フェス映像等を確認しておく
好きなバンドがモッシュやダイブを行うのか不安な場合は、過去のライブ映像やフェスの様子をYouTubeなどで確認してみましょう。そのバンドのライブの雰囲気を知ることができます。
また、「モッシュやダイブは禁止」とアナウンスされていても、実際にライブ現場に行くと、その場の雰囲気が熱くなりすぎて発生してしまうこともあります。それで残念な思いをしないように、YoutubeやX等で、実際にモッシュ、ダイブが発生するのかどうかを事前に確認しておくのが肝心です。
ライブ中にモッシュ、ダイブが起きやすい曲/アーティストを確認しておく
過去のライブ映像を見ると、実際にライブでモッシュやダイブが起こりやすい曲やアーティストを把握することができます。事前に確認しておけば、その曲が始まったら後方に移動するなどして回避することができます。
無理に前方エリアに行かない
モッシュやダイブは、基本的にステージ前方のエリアでぎゅうぎゅうの状態で起こることが多いです。モッシュやダイブは怪我に繋がる可能性もあるので、これを徹底的に回避したい場合は、後方エリアやサイドエリアに移動すると、モッシュやダイブに巻き込まれる可能性は低くなります。
ライブ中も周囲に気を配り、モッシュピットから遠ざかる
ライブが盛り上がってくると、周囲の状況が見えにくくなることがあります。しかし、常に周りに気を配り、人が集まり始めたらすぐに場所を移動するなどの対処をしましょう。
あるいは後ろの様子をちらちらと確認し、ダイバーが飛んできていないか確認しましょう。気づかぬうちにダイバーが飛んでくると頭や顔面を蹴られてしまうことがあります。
モッシュ、ダイブが起きにくいライブ、フェス
モッシュやダイブが苦手だという方は少なくありません。これらの行為は少なからず危険性を孕んでいます。これらを回避しつつ音楽を楽しむことができるライブやフェスを紹介します。
ROCKIN'ON系のフェス(Japan Jam、ロッキン、CDJ)

ロッキング・オングループが運営する音楽フェスはモッシュやダイブの規制が非常に厳しいことで有名です。事前にこれらの行為が禁止であることがアナウンスされ、またフェス当日これらの行為を行うと即座に退場が命じられます。
イベント運営者も「参加者の安全性・快適性の最大化、ストレスの最小化」を掲げており、これに則り危険行為を厳しく禁じているため、ロックバンドのライブ、フェス初心者でも参加しやすいものとなっています。

東京で開催されるメトロックも同様です。モッシュやダイブなど危険行為をセキュリティが見つけた場合、厳重注意、退場命令など厳しい対応が待っています。
これらの行動が観測されると、セキュリティがその観客の入場用のリストバンドを切ったりするので、落ち着いてこのフェスを楽しむようにしましょう。
観客の年齢層が高いバンド、曲調が激しくないバンド
観客の年齢層が高めだと落ち着いた観客が多いので、モッシュやダイブが発生せずにその場で落ち着いて楽しむことができます。
また、曲調が激しくないバンドだと観客の好みもパンクやハードコア系とは少し離れるので、比較的落ち着いたフロアになりやすいです。
ただし、普段は比較的落ち着いているバンドもフェスのコンセプトによっては激しめになったりするので事前に確認しておくことが重要です。
▼モッシュ、ダイブが起きにくいバンド
- ASIAN KUNG-FU GENERATION
- Official髭男dism
- ストレイテナー
- Chilli Beans
- …etc
まとめ:モッシュ、ダイブは不満や対立が生まれやすいので配慮を忘れない
モッシュやダイブは、ライブの興奮を最高潮に高める魅力的な楽しみ方の一つです。しかし、そこには常に怪我やトラブルのリスクも伴います。自分も周りの人も安全に楽しめるように、マナーを守り、周囲への配慮を忘れないようにしましょう。