嘘ではなく、本当のことを歌いたかった。―シンガーソングライター・立元仁
不器用でも、夢中で追いかける。 そこに嘘はない。
ただ、本当の気持ちを声に乗せる。
立元仁というアーティストは、そうやって路上に立ち続けてきました。
20代で声優として活動していた彼が、なぜ「歌う人」になったのか。
そして10枚目のアルバム「人波に埋もれたあの夕焼け空の中で」に込めたひとつの確信。
嘘の世界から、本当のことを歌う場所へ
立元さんの音楽の原点は、20代の頃に活動していた声優の仕事にありました。
演じることの面白さを知りながらも、彼の中にはそれだけでは満たされない何かがありました。 気づけば、カラオケに通う日々が週3、4回。もはや「予約禁止」になるほどの頻度だったといいます。
「これ、カラオケで歌ってるだけじゃちょっと厳しいなと思って。歌は本当のことを言える気がして。そこで切り替えたって感じですね」
演じることで磨いてきた表現力を、今度は「本当の自分」を伝えるために使う。 そう決めた瞬間から、立元仁というアーティストの歩みが始まりました。
きっかけとなったのは、養成所に通っていた頃のこと。
敬愛する尾崎豊ゆかりの“聖地”で、初めて路上に立ちました。
「とりあえず尾崎豊が好きなので、その尾崎豊ゆかりの聖地の場所があって。そこでやり始めて。実際に通ってる人たちのリアルな反応を見たところからですね」
路上に立ち続けて8年、通算400回のステージ
それから積み重ねてきた年月は、長くて8年。
つい先週、ステージの回数はちょうど400回を数えたといいます。
道を歩く人にとって無名のミュージシャンの歌に足を止める理由などない。
そう分かっていても、立元さんはその一瞬一瞬に支えられてきました。
「正直、歩いてる側からすると自分は応援するメリットなんてないというか、有名でもない。
それなのになぜか毎回声をかけてくれたり、自分の曲を好きだと言ってくれたりするのは、すごい嬉しいですね」
声優時代も含めれば、表現の道を歩み続けてすでに長い年月。
それでも、道を逸れようと迷ったことは一度もないと言い切ります。
「ないですね。もう他のことをやろうっていうのも出てこないし、他に何か考えてみても、しっくりこないというか」
続ける理由を尋ねると、返ってきたのは飾らない本音でした。
「最初の頃はただ歌いたくて歌ってただけなんですけど、途中から、応援してくれる人に何のメリットもない状態だっていうのが引っかかって。俺が有名になれば、その人たちが自慢できるじゃないですか。“昔から応援しててよかった”って自慢させてあげたい。それが最近では結構大きいモチベーションになってますね」
10枚目のアルバムに込めた、ひとつの確信
今回リリースされたアルバムは、立元さんにとって10枚目の作品。
表題曲であり、アルバムの核となっているのが「人波に埋もれたこの夕焼け空の中で」です。
「15曲くらい収録されているんですけど、アルバムのタイトルはこの曲のタイトルとほぼ同じで。これを歌いたいがために作ったようなアルバムなんです」
なぜこの曲を、シングルではなくアルバムという形で届けることを選んだのか。
「全体を通して、この曲が持つ確信を歌うような感じにしたくて。10曲くらいでこの曲を“囲って”、大きなものとしてドーンと出したかったんです」
10枚目という節目に懸けた思いは強く、妥協のない制作だったと振り返ります。
「もうこれ以上は自分の力でこれ以上のクオリティを作れないっていう気持ちで、全曲、自分でも限界まで作りました」
制作の過程で最も苦労したのも、この表題曲でした。
アルバム自体は今年6月に完成しましたが、実はこの曲、去年8月の時点で一度「完成」していたといいます。
「歌詞と、最後のサビ手前の間奏を直して完成したと思ったんですけど、しっくり来てないなってなってまた作り直したんです」
何が「しっくり来ていなかった」のか。
その答えは、歌詞の視点そのものにありました。
「前は割と歌詞だけで伝えようとしていて、歌詞と前奏や間奏がはまってなくて。この曲の良さを伝えるには、歌詞だけじゃちょっと足りない感覚があったんです。前奏を聞いただけで、だいたいどういう雰囲気なのかが伝わるようにもしたくて」
そしてもうひとつ、視点の比重にも手を加えたといいます。
「“あなたが選んだ道ならば、それが幸せだと信じよう”とか、そういう部分をうまく出せたなと思っています」
作り直しを重ねて辿り着いた今の形について、立元さんは迷いなくこう語ります。
「もうこれ以上は無理っていう、納得の出来です」
2曲で、1つの物語を。
アルバムに大切に聴いてほしい組み合わせがあると言います。
表題曲の1つ前、9トラック目に収録された曲「From the moment I met you」です。
「和訳すると“あなたに出会った瞬間から”という意味でつけたんですけど、このインストは表題曲の前奏の前奏みたいな感じで作っていて。2つで1つのような曲なんです」
物語のように2曲を合わせて聴いてほしい。
どんな状態になっても、「それでよかった」と思えるように
このアルバムを通してリスナーに届けたいメッセージを尋ねると、
立元さんはこんな例えを口にしました。
「小学生がサッカーや野球、鬼ごっこで夢中になって遊ぶ感じってあるじゃないですか。技術的には別に上手じゃなくて、勢いだけみたいな。でも不器用でも純粋に追いかける、その無我夢中な感じを出したかったんです」
結果がすべてではない。もがきながら、それでも夢中になれること自体に価値がある。
その先にあるメッセージを、立元さんはこう言葉にしました。
「いろんなことが起きても、結局“それでよかったんだ”って思えるように。どんな状態になってもこれが最善だったと思って、毎日なんとかかんとか乗り切っていこう──そんなテーマが、アルバム全体にありますね」
次の一歩、そしてこれからの活動
すでに次の作品にも着手しているという立元さん。
11枚目のアルバムは、今作とは異なる方向性を見据えています。
「11枚目は、もっとアップテンポでリズム的な聴きやすさにこだわりつつ、内側のものを今までよりももっと外に解き放つようなアルバムを考えています」
リスナーの方々へ
10枚目のアルバム「人波に埋もれたあの夕焼け空の中で」には、不器用でも夢中で追いかけることの尊さと、どんな結果になっても「それでよかった」と思えるようにという願いが込められています。
ぜひ、表題曲とその前に置かれたインストゥルメンタル曲を続けて聴いてひとつの物語として味わってみてください。
立元仁というアーティストは、今日もまた路上でその声を響かせています。
▼立元仁さんSNSリンク(各媒体)
YouTube:https://www.youtube.com/channel/UCkLzKXPkJUJtOiK_1piaCxA

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