日本の音楽市場は、10年以上にわたりアメリカに次ぐ世界第2位を維持しています。本記事では、2025年最新データ(IFPI Global Music Report 2025)をもとに、日本市場が特別である理由や背景、そして今後の展望を解説します。
世界音楽市場の最新ランキング(2025年版)

国際レコード産業連盟(IFPI)の「Global Music Report 2025」によると、2024年の世界音楽市場は約296億ドル(前年比+4.8%)に達し、過去最高を更新しました。成長の大部分はストリーミング収益(+10.4%)によるもので、世界の音楽消費がデジタル中心に移行していることが分かります。
2024年 世界音楽市場ランキング(IFPI調査)
順位 | 国名 | 市場の特徴 |
|---|---|---|
1位 | アメリカ合衆国 | 世界シェア約36%。ストリーミングとライブ市場がともに拡大。 |
2位 | 日本 | フィジカル売り上げが世界最大。アジア唯一の上位常連国。 |
3位 | イギリス | ストリーミングが堅調に成長。新興アーティスト支援が活発。 |
4位 | ドイツ | CD・レコードなどフィジカルが依然強いヨーロッパ市場。 |
5位 | 中国 | ストリーミング急成長中。テンセント系プラットフォームが牽引。 |
6位 | フランス | サブスクリプション普及率が上昇し、収益が安定成長。 |
7位 | 韓国 | K-POPが世界的ヒットを生み、輸出型産業として確立。 |
8位 | カナダ | グローバルヒットメーカーが多数。校内外の需要が堅調。 |
9位 | ブラジル | ストリーミング普及率が高く、ラテン音楽が牽引。 |
10位 | オーストラリア | 地域アーティストのグローバル進出が増加中。 |
出典:IFPI Global Music Report 2025
世界的にはストリーミングが市場成長を牽引していますが、それでも日本が第2位を維持しているのは、独自の音楽文化とフィジカル重視の消費構造があるためです。
次章では、その理由を詳しく見ていきましょう。
日本はなぜ世界第2位の音楽市場なのか
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世界と日本の成長率の違い:ストリーミングとフィジカル
過去10年間で、世界の音楽市場は急速にストリーミング中心にシフトしました。2024年時点では世界の音楽収益の約69.0%がストリーミングによるもので、CD・レコードなどのフィジカルメディアは約16.7%に減少しています。(出典:IFPI Global Music Report 2025)
一方、日本市場は依然としてフィジカルが主力です。
項目 | 売上(億円) | 構成比 |
|---|---|---|
フィジカル(CD・レコード) | 約2,057 | 56.4% |
デジタル(配信・ストリーミング) | 約1,589 | 43.6% |
出典:Omdia「Japan Music Industry Update 2025」
フィジカルメディアの占める割合は前年からわずか0.3%減で、世界でも異例の高さです。RIAJの畑陽一郎氏も「日本はフィジカルセールスがまだ約70%を占める唯一の市場」と指摘。アイドルファンダムや特典付き商品の文化が、この独自の市場構造を支えています。
国内アーティスト中心の消費を支える文化
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日本の音楽市場は、国内アーティストへの支持が非常に強く、海外音楽の消費は比較的低いことも特徴です。
海外音楽への関心の低さ(2024年 Luminate調査)
国名 | 海外音楽に触れる割合 |
|---|---|
フィリピン | 95% |
シンガポール | 74% |
日本 | 57% |
特にZ世代では海外音楽を聴く割合が日本平均より27%低く、国内アーティスト中心の消費傾向が顕著です。
(出典:Luminate「Japan and Asia: 2024 Music Industry Trends」)
国内志向を支える文化要素
日本の音楽市場で国内アーティスト中心の消費が根強いのは、単なる好みの問題ではありません。言語や文化、ファンダム活動、国内市場のエコシステムといった複合的な要素が重なり合うことで、リスナーは自然と国内音楽を中心に楽しむ傾向が形成されています。
- 言語・文化の壁:日本語楽曲が中心のメディア環境
- 推し活・ファンダム文化:CD購入やライブ参加がファン活動の一部
- 国内市場の充実度:制作・流通・ライブ・メディアが国内だけで完結
これにより、リスナーは「国内の音楽だけで十分」と感じ、海外音楽への関心が低くなる傾向があります。また、アイドルやJ-POPの新作リリースや特典付き商品が売上を牽引し、日本特有の「フィジカル+体験型コンテンツ」市場を維持しています。
ストリーミング成長と日本市場の課題
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近年、日本でもストリーミングサービスの利用は着実に増加しています。SpotifyやApple Music、LINE MUSICなどのプラットフォームが普及し、若年層を中心に音楽の楽しみ方が変化しつつあります。しかし、世界市場のように急速なデジタル化が進まないのは、国内特有の構造や文化的要因が関係しています。
主な課題
- 高齢化と人口減少
- 2023年の出生数は前年から5.1%減、8年連続減少
- 65歳以上が人口の30%超、世界でも突出した高齢化
- 若年層依存のストリーミング市場
- 高齢者はデジタル音楽に慣れていない場合が多く、利用拡大は限定的
- フィジカル文化の根強さ
- CDや特典付き商品などがデジタル移行を遅らせる要因
これらの要因により、国内市場だけでのストリーミング収益の成長には限界があります。今後、日本の音楽産業がさらなる成長を遂げるには、海外市場の開拓やデジタルコンテンツの新たな魅力づくりなど、国内外の戦略を組み合わせた対応が不可欠です。
今後の展望:海外展開で成長のカギ
国内市場の制約を補うため、海外市場の開拓が日本の音楽業界の次なる課題です。特に、アニメ音楽やボーカロイド、シティポップ、Kawaiiカルチャーは、世界的に人気を拡大しています。
具体的な施策としては:
- YouTube・TikTokを通じた海外ファン獲得
- アニメ・ゲームとのコラボ展開
- 海外フェス・イベントへの出演強化
これにより、日本の音楽産業は国内市場の限界を超え、グローバルな成長が期待できます。
ストリーミング市場の現状
IFPIの「Global Music Report 2025」によると、世界の音楽市場ではストリーミングが主要な収益源となり、全体の約69.0%を占めています。サブスクリプション型や広告型サービスが大きな割合を占め、世界的にはデジタル化が急速に進んでいます。
一方、日本ではフィジカル文化が根強く、ストリーミングの占める割合はまだ約43.6%に留まります。
(出典:Omdia「Japan Music Industry Update 2025」)
このため、世界市場がデジタル主導で成長する中、日本はデジタルシフトのスピードが遅い市場として特徴的です。
国内市場の課題
日本市場が直面する主な課題は以下の通りです。
- 高齢化と人口減少
- 2023年の出生数は前年から5.1%減少し、8年連続の減少
- 65歳以上が人口の30%超と、世界でも突出した高齢化社会
- 若年層への依存度が高いストリーミング
- 高齢者はデジタル音楽に慣れていない場合が多く、利用拡大が限定的
- フィジカル文化の根強さ
- CDや特典付き商品など、既存市場がデジタル移行を遅らせる要因に
これらの要素により、日本のストリーミング市場は成長余地がある一方で、国内だけでの拡大には限界があります。
今後の展望
国内市場の成長が頭打ちになる中、今後の日本音楽業界にとって鍵となるのは 海外市場の開拓 です。近年の世界的なアニメ音楽やボーカロイド、シティポップ、Kawaiiカルチャーの人気は、日本発コンテンツのグローバル展開の追い風となっています。
具体的には以下の施策が期待されます。
- YouTube・TikTokを通じた海外ファン獲得
- アニメ・ゲームとのコラボ展開
- 海外フェスやイベントへの出演強化
これにより、国内市場の人口減少や高齢化による制約を補い、日本の音楽産業の次の成長ドライバーとなる可能性があります。
まとめ:日本の音楽市場を支える文化と今後の展望
日本は2025年も世界第2位の音楽市場を維持しており、フィジカルメディアの強さや独自の音楽消費文化がその背景にあります。
特に、根強いアイドル文化やファンダム活動により、CD購入やライブ参加などの消費行動が売上を支えています。また、日本のリスナーは海外音楽への関心が比較的低く、国内アーティストへの支持が厚いことも、この地位を維持する大きな要因です。
一方で、ストリーミングの利用は徐々に拡大しているものの、人口減少と高齢化が進む中で国内市場の成長には限界があります。今後は、海外リスナーの獲得やグローバル展開を進めることが、日本の音楽業界にとって最大の課題であり、次の成長の鍵となるでしょう。

